夏が来ると思い出す、あの日の私。
あの日の痛々しい記憶。
独身時代の若かりし頃の話。
当時私は一人暮らしをしていて、その部屋で大量に虫に刺され、足がボコボコになった事があった。
蚊という虫は、弱々なヤツと強烈なヤツがいるが、
その時の蚊は強烈を超えて凶暴だった。
数カ所さされて両足ごと赤く腫れ上がって、
痒くて痒くてどうしようもなくて、仕事帰りにたまたま見つけた皮膚科に、
「ここしかない!」と駆け込んだ。
皮膚科の先生ならこの凶暴な痒みに寄り添ってくれると思ったのだ。
ようやく順番が回ってきて、診察室に入り、「先生、こんなに蚊に刺されて痒くて」
と相談したところ。
「はいはい、虫刺されですね〜」
軽くあしらわれて失笑された。
その瞬間、こんな虫刺されなんかで病院に来るなんて、ホント迷惑な奴だと急に恥ずかしくなってきた。
でも痒いものは痒い。結構なボゴボコ具合だし何とかして欲しい。
「先生、何とかなりませんか?」
というと、
「んー、虫の予防対策して、刺されないように気をつけてくださいね〜」
これまた軽くあしらわれ、刺される奴が悪い、みたいな言い方で、小馬鹿にされたような気持ちになった。痒くて寄り添って欲しかったのに、全く寄り添ってもらえず、その辺の薬局で買えそうな薬をもらっただけだった。
なんて冷たい先生なんだと悲しくなったが、待合室にはアトピーなどの皮膚炎で来ている子ども達もいて、いい大人が虫刺されくらいでわーきゃー言って、そりゃ先生も冷たい対応になるわな、すいません。と思いながら皮膚科をあとにした。もちろん、帰りに早速キンチョールを買い込んだ。
その後数日間、悲しさと共に痒みに耐えた。
何事もなかったように痒みはなくなり、私は無事に日常生活を取り戻すことができた。
そりゃそうだ。ただの虫刺されだもん。
あの時は、すいませんでした。