お片付け問題

子育て世代のお母さんなら、誰もが通る片付け問題。
もちろん、例外なく私も通った。

何度言っても片付けない。
学校から帰ってきたら荷物はその辺にポーンと投げ捨てられたまま、リビングの端に設置してある定位置にランドセルが置かれる事はない。すぐそこなのに。手を伸ばせば届くのに。たった3歩なのに。夢になかなか手が届かないのと同じように定位置は果てしなく遠い。
このままでは大人になって汚部屋の住人確定ではないか。光景がありありと目に浮かぶ、我が子がゴミに埋もれてもなお、平気な顔をして笑っている姿。
このままではいかん!なんとかせねば!

そんなある時、美容院に行って美容師さんとお話していた時、この片付け問題の話題になった。
「うちの子は学校から帰った荷物をリビングに置きっぱなしで毎日毎日バトルになります。どうしてますか?」
私はその頃には少し寛大になっていて、
「前は怒ってましたけど、もう、放置してます。」
と答えた。言ったからといってやらないし、毎日バトるのも疲れてしまったからだ。
「主体性に任せる」と言えば聞こえはいいが、その時は放置する方が楽だったのだ。
「へー、放置できるなんて凄いですね!私はどうしても言っちゃいます。」
「そうですよね。」
その気持ち、めちゃくちゃわかるよ。通ってきた道だから。

でも、言った方がいいのか言わない方がいいのか、何が正解なのかは分からない。どっちにしろやらないのなら一緒か。
リビングは一向に片付かないという現実は一緒だ。
それまで子どもの片付け問題については色々悩んできた。
周りのお母さんたちもだいたい一緒。みんな悩んでる。
育児本とか片付け本を読めば色々アイデアや工夫が載っている。

二階の各自の部屋に荷物を持って行くというのは子どもにとってはハードルが高いから、リビングに置き場を作る。
よくある提案。私はコレを採用していた。
新しく家を建てるとしたら、子どもグッズを固めて置けて、お風呂と直結している小さい部屋を作る、というのも流行っていた。
更には、もう玄関にランドセル置き場を作り、リビングにさえ侵入させないという強者の提案もあった。
そうそう、お母さんたちはそうまでしてリビングを綺麗に保ちたいのだ。

その後、カラーリングの放置時間にリビングに取り残されたランドセルの気持ちになりながらぼーっと雑誌を読んでいた。インテリア雑誌だったか、オシャレな家に住んでいる人特集の様な雑誌だった。憧れの暮らしを手に入れている人たち。部屋には統一感があり、センスむき出しの、「ステキですね」としか言いようのない暮らしをしている。
そこに住む人たちは、家だけではないきっと心もハイセンスに違いない。そんな、高貴の眼差しで雑誌を読んでいた。
すると、その中の1人の方がこんな事を書いていらっしゃった。

「リビングにある子どものものは、私が片付けてしまいます。心配しなくても子どもはいつか片付けられるようになります。私が片付けるのが一番ストレスなく過ごせます。怒らなくてもいいし、リビングはいつも綺麗に保てますから。」

キラーン!新しい視点!目から鱗視点!

おウチの専門家の様な人がそう書いてるわけだから、コレが正解の様な気がしてきた。
人の影響を受けやすい私はすぐさまその視点を取り入れた。
まあ、めんどくさがりの私は荷物を二階に運ぶことはなく放置する事には変わりなかったが、「いつか片付けられるようになる」というおおらかな視点を手に入れたのだ。

そういう視点を持つと不思議と放置荷物の存在が薄くなった。荷物を見てイラつくことがなくなったのだ。
「いいのよいいのよ。いつかできるんだから、いいのよ。」
なんてね。

それから数年後、高校生になったうちの子は、片付け問題なんて元々なかったかの様に自分の荷物は自分で二階に運び、自分の部屋もまあまあ綺麗にしている。
めでたく、汚部屋の住人にはならなかったのだ。

あの人の書いていてた事は正解だったのかもしれない。
あんなにも片付け問題に向き合っていた当時の自分に教えてやりたい。

ああ、でも、世の中には「子どもの物はなにがなんでも子供に片付けていただきます!」というお母さんが少なくないのも事実。

まあ、色んな考えがあってもいいじゃないか。